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すごーい!

1.お型付け

 春休み生活崩壊で進捗が微妙なことに...しかし近日型付けます。

 

 型付けます。

 

 型とは言うまでもなく、typeですね。Int,Double,IO String,Array (Int,Int) Char...などがあります。世の中では、型をつけるとさまざまなことがスッキリすることから、物事を整理することを型付けるといいます(?)。

 プログラミング言語で型があるといいとかわるいとかいう話があるようで、僕はある側ですが、そもそもプログラミングは初心者なのでこの方向にはそんなにつよく主張すべきものがない。

 ところが、10年付き合って来た物理というか類似の数学を弄る科学では本当に型を付けてくれというつよい思いがあります。

 本当につよい。

 型がついていない本を読むのは大変な苦痛です。言処理系なら、アスペよろしく実行時エラーでおさらば、あとはプログラマのせいですぅ~といえますが、本だとそうはいきません。なぜなら、著者のせいにしても何も生まれないからです。
 読者は常に著者の想像する「意味」を、その数式のくせに非形式な式(台無し…)から読み取って、それを最大限尊重した解釈を汲み取らなくてはなりません。
 曖昧な記述に対してGHCならNo instance for...だとかCouldn't match expected type...with actual type...と当然のように返すことができても、人間は許されないのです。かなしい。人権はないのか…人間は処理系以下か…
 こうした曖昧な概念を書いている人間の頭にあるのはとにかく非形式だが少なくとも彼にとってはリアルな「意味」なのです。「意味」があることだけは当人にとって確かなので、その文章を動的型付けで正常に処理できる処理系を、勝手に読者が繕ってくれるという心算で書いているのです。この文章も…アッアッ…
 しかしその意味を共有する為には形式が必要なわけで、もっと形式的表現力というものに気を配る風潮があってほしいと思うばかりなのですが、自然言語はとにかくOpenEndであり、普段の議論はそれで雑に解決してしまうので、まったく遠き理想です。
 僕はもう人びとの言う「意味」を察するのに疲れました。
 そこで型です。とにかく型を付けましょう。型をつけると型付くといいますから。

 で、とりあえず渡辺さんの学習理論本を読んだり読まなかったりとまた積み始めているので、2章まで型をつけました(pdf)。
http://www.asahi-net.or.jp/~fu5k-mths/pdf/watasumi2_tba_up.pdf

 

2.電磁気のおもひで

 ところで、カタカタ言う前の自分は幾何厨でして、物理のいろんな概念を多様体にぶち込めというお気持ちがしばらくありました。
 多様体はいい。とてもいい。僕の中で幾何厨であるモチベーションと、静的型付けモチベーションはまぁ似たところがありまして、単に一般化されて後者になっただけという感じがします。
 要するに、その数学的概念がどう動機づけされているか、というのを考えると、伝統的な言い回しを無視して、ある種の数学的概念をストレートに投入した方が定式化も見通しもスマートになるとか、やりたいことに対して先に数学的構造や圏や型を動機とともに宣言してしまったほうが、解釈がブレなくていいとかそういう話なのです。
 物理もできてから長いですから、発想としては面白くともなんか曖昧/古い/飛躍がある/ill-defined/解釈が雑な説明がぼちぼちあるわけです。まぁそれでも実験に反するような死に方や明らかな矛盾はすぐに補足されますから、そうではないという点でこうした不満は微妙な話で、しかし流石にレガシーはきちんと捨てて欲しいというお気持ちがあるので「~~をもっと短く正確に宣言するとしたらどうなるか」というのは常時気になるわけです。アスペだ。アスペで何が悪い。

 で、多様体です。例えば相対論を、多様体でモリモリ書こうという風潮は、モダンな本だと割と採用しているみたいなのですが、学部で使うような日本語の古典的なスタイルの入門書では、ほんのちょっと触れられれば良い方で、ふんわりとした「4元ベクトル」とか「共変テンソル」のような曖昧な何某かで説明が終了するのもしばしばです。
 これは微分幾何をしなくても究極死なない特殊相対論ですらそうで、抽象ベクトル空間すら触れずに説明が終了する無謀すらあります。
 一般相対論は僕は天文とかのガチ方面をやっていないので、詳しい事情はわかりません。が、一般相対論はそもそも最初から擬リーマン幾何かつゲージ理論なわけですから、微分形式なりなんなりを使ったほうが良いに決まっています。それらは第一義にそれなんですから、他の語法を使うと余計混乱するわけです。

 そう、微分形式です。古典にはフランダースの「微分形式の理論」とかいう本がありまして、物理などで微分形式自体をふんわりと使う風潮は今更微分幾何プッシュするまでもなくあったようなのです。
 一般相対論ほどガチでもない微分形式のふんわり用法としてかなりメジャーなのが、電磁気です。電磁気はもうベクトル解析が幅を効かせてますし、座標変換行列なんかがよく演習問題になっていたりするので、あんまり導入ご利益がないのでは…という向きもあります。
そんな中で

マクスウェル方程式―電磁気学のよりよい理解のために (SGC Books)

はあえて微分形式で3次元の電磁気をいじるという斬新な本で、読みやすいかどうかは置いておいて、電磁気学の諸概念に、ちゃんと「相応しい微分形式の階数」が付くのです。場の量およびベクトル場が、バンドルの切断であることは良いでしょう。それらは局所的に成分表示できるのですから、バンドルです。すると、後はどの場の量がどのバンドルの切断かという「型」を付ければいいですが、こと電磁気に関してはとっても簡単で直観的です。

 

 ここで軽くやってみましょう。とりあえず基本変数として、
{\bf E},{\bf B},{\bf D},{\bf H},{\bf P},{\bf M},\phi,{\bf A},A_\mu,T_{\mu\nu},F_{\mu\nu}
とかがありますね。
順に電場、磁束密度、電束密度、磁場、分極、磁化、スカラーポテンシャル、ベクトルポテンシャル、それから4元化して、4元ポテンシャル、エネルギー運動量テンソル、電磁場テンソルです。エネルギー運動量テンソルポインティングベクトルと応力テンソルを含みます。
 多様体のほうは、空間三次元多様体Mを空間、それから時間\mathbb{R}Mの積またはNを時空としておきましょう。

 さてクイズです。これらは全部ある意味で微分形式とするのが相応しいのですが、その階数はいくつでしょうか?

 

正解(?)は順に
1,2,2,1,2,1,1,0,1,3,2
です。(多分)

 

 なぜそう考えるかという話をします。これらは全部空間や時空に広がる物理量ですが、物理量はそれを測定する手段があります。
 その測定器の形状は、様々です。しかし以上のものは、なんらかの理想的な測定器が何次元の情報で同定できるかによって、微分形式の階数が決まります。

 そもそもこうしたものを微分形式で書く理由ですが、多様体の部分多様体に対するスカラー汎関数、もとい座標Lebesgue絶対連続かつ密度が可微分な「測度」で、局所的に微小なk次元立方体を考えた時に、漸近的に、その「辺」に対して線形であるようなものを考えると、これは微分形式にほかならないので、凡そ微分形式で表現すること自体はそれなりに動機づけされていると見て良いでしょう。
 測定器がなす部分多様体積分して測定値を得るような概念が微分形式というわけです。

 

 まず\bf{E}です。電場とはどのように定義されたでしょうか。それは単位仮想電化の受ける力です。力とは線に沿ってエネルギー積分ができる概念ですから、余接バンドルの要素、つまり1形式です。

 \bf{B}はどうですか。磁気力線というものをだれかが考えました。回路を横切る磁気力線の量によって誘導起電力が得られると考えられています。磁束は面を用いて計算されるので、2形式です。あるいは別の解答として、仮想電流片の受ける力と言っても良いです。その場合も力が1形式で、電流は接ベクトルですから2形式です。

 \bf{D}はどうですか。これは電気力線ですから磁束密度に準じて2形式です。逆に\bf{H}は仮想磁荷の受ける力ですから電場に準じて1形式です。

 スカラーポテンシャルは何でしょうか?微分して\bf{E}なんですから当然0形式です。ベクトルポテンシャルはもちろん1形式です。

 ポインティングベクトルは?面あたり時間あたりエネルギー流出ですから、空間上2形式です。しかし時空で考えればこれに時間方向が入るので3形式です。エネルギー密度は?もちろん3形式でしょう。立体で積分するのですから。応力テンソルはどうですか?空間では3形式でしょう。面を指定して力が得られ、力は1形式です。これらを統合すると、エネルギー運動量テンソルは3形式です。普通の記法で添字が二つしか書かれていないのはHodgeStarがかかっているのでしょう。多分(?)。

 同様に、電磁場テンソルも統合すれば2形式です。運動する電流片は2ベクトルで指定できますが、これに対する仕事を与えます。4元ポテンシャルが1形式であることにも整合します。

 では分極はどうでしょうか?誘電体の性能を測るときには、測りたい面で薄く切って、コンデンサに差し込みます。面は二次元ですから、2形式です。
 同様に磁化はどうですか?磁性体の性能を測るときは、測りたい方向で細く切って、ソレノイドに差し込みます。ソレノイドは一次元ですから、1形式です。

というわけで、めでたく次のように型付きます。
{\displaystyle\begin{align}{\bf E}: \Gamma(\wedge^1T^*M)\\{\bf B}:\Gamma(\wedge^2T^*M)\\{\bf D}: \Gamma(\wedge^2T^*M)\\{\bf H}: \Gamma(\wedge^1T^*M)\\{\bf P}: \Gamma(\wedge^2T^*M)\\{\bf M}: \Gamma(\wedge^1T^*M)\\{\bf A}: \Gamma(\wedge^1T^*M)\\ \phi: \Gamma(\wedge^0T^*M)\\ A: \Gamma(\wedge^1T^*N)\\ T: \Gamma(\wedge^3T^*N)\\ F : \Gamma(\wedge^2T^*N)\end{align}}
 よかったですね。ちなみに\Gamma(-)はバンドル切断のことです。マクスウェル方程式もこれらの間の関係式で書けます。
 なお適当な事情で階数が変わることがありますが、大抵の場合は計量テンソルで落とすか、またはHodgeStarでdegreeを反転させているのが大半です。HodgeStarはリーマン多様体上で定義されるものですが、これは言い換えれば空間の計量やその成分表示(座標系)に依存するということです。
 そして紛らわしいことに、HodgeStarによる反転は直交座標を採用して成分だけを見ていると変化に気が付きません。そうした中で軸性ベクトルの区別だとか、\bf{E},\bf{D},\bf{B},\bf{H}は同じなのか違うのかとかそういう曖昧なことになってしまいます。適切な抽象化をしてはじめて識別できる物というのがあります。抽象化がわかりを運んでくることがわかります。

 

3.ラグランジュ形式

 微分形式というと、解析力学多様体上の微分形式の話になるのですが、これも物理の学部レベルの入門書では多様体の多の字も出ないことがあります。そもそも微分幾何の種を巻いたの物理サイドじゃなかったのかよと突っ込みたくなるのですが、不思議な話です。
 解析力学周りで僕が本当にブチ殺すべしと思っているペテンがありまして、それは
量子力学を学ぶために解析力学(特にハミルトン形式)が要る」
という言い回しです。これは本当に断言しておきますが、大嘘ですからね。
 これを本気で言っている人のことは信用しないでください。ひどい目にあいますよ。
僕は真面目に解析力学をやろうとして山本義隆さんの本の沼に落ちて幾何厨になりましたが、その結果量子力学の発見法的議論に対する深い憎しみだけが残ったことは言っておきます。
 量子力学解析力学の構造なんか見向きもしないで好き勝手やりますからね。真に受けるだけ損です。既に学んだ皆さんは、これを後世に伝えることだけはやめてください。知的虐待ですよ。
 まぁこの恨み言を続けると長くなるのでやめますが、解析力学自体は、微分幾何でアレしなくてもそれ自体よくできたお話で、発想もうまくいっていて、精密化もやろうと思えばできて、あげくシンプレクティック幾何学とかいう純粋な幾何にまで発展する本当にいい話なんですが、
 で、そう言えばシンプレクティック多様体という語は聞くけどラグランジュ形式の方はあまり語られないなと思ったので、微分形式によるラグランジュ形式を書いておきました。だいたい山本義隆本ネタですが、当文献は「型」情報がイマイチで読みにくかったので、その補足として(pdf)。
http://www.asahi-net.or.jp/~fu5k-mths/pdf/geo_lag.pdf


4.けもの

フレンズ、よかったですね。